10月の終わり。


先生から嬉しい報告があった。



「親太郎くん、おめでとう。退院できるよ」



目を丸めたのは、あたしだけではなかった。


ベッドで上半身を起こしている親太郎と、その横で椅子に座っているおばさんも同じ表情をしていた。


「本当、ですか?」


驚きと喜びがないまぜになった表情。


嬉しさをこらえている親太郎の顎が、ピクピクと動いていた。


「数値もだいぶいいし、今夜一晩様子をみて、なにもなければすぐに退院だ」


親太郎は、輝く目であたしを見た。


「やったね!! 親太郎!!」


あたしは親太郎の手を取って激しく上下に振った。


親太郎は大きく口を横に開き、白い歯を見せニッと笑った。



「ただし、学校の帰りには病院に寄ること。それから、少しでも体調が悪いなと思ったらすぐに言うこと。わかったね」