「もっと生きて…病気、治して……これからも、歌、歌ってよ……これからも、僕や、たくさんの人達に、親太郎の、歌…聞かせて……」



颯太くんは、大きく深呼吸した。


その時――…


颯太くんの背中に、大きな翼が生えた。


そんなはずはないのに、確かにあたしには見えたんだ。


真っ白な羽が颯太くんの背中にあって、空からもたくさんの羽が落ちてきていた。


颯太くんは、羽ばたく準備をしていた。


颯太くんの目は、徐々に力を失っていった。


お父さんの手を掴む手にも、力が入っていない。


颯太くんの両親は泣き叫んだ。


嫌だ嫌だと、颯太くんの体をさすった。


けれど――…


颯太くんは、もう、目を開けることはなかった。