それは、ここにいるみんなが思ってることだった。
あたしだってそうだ。
笑わなきゃって思うと、笑えなくなって……。
普通にしなきゃって思うと、表情がどんどん暗くなっていく。
「親太郎には悪いけど、もうちょっと、俺らに時間をくれない?」
悲しげに眉間にしわを寄せた高橋くん。
下校のチャイムが鳴り響く校舎。
靴箱は、オレンジ色に染まっている。
あたし達の横をたくさんの生徒が通り過ぎていき。
あたし達の周りだけが、時間が止まったようにみんなが息を止めた。
叶くんから預かった紙をギュッと握り、3人の目を見て微笑んだ。
やっぱり、真実を受け入れるにはかなりの時間が必要だ。
痩せた親太郎を見ても、髪が抜けた頭を見ても。
まだ、受け入れられないのだから――…


