すると背後でバタンとドアが閉まる音がした。
そしてエンジン音がして私の脇を静の家の車が通って行った。
「それじゃ紫翠ちゃん、いこっか!」
「・・・・・・え、静?」
隣を見ると静が立っていた。
「どうして・・・」
「一人だとつまんないでしょ?
僕も一緒に散歩に付き合おうかなって」
なにより紫翠ちゃんと一緒にいれるしね!と言った静。
「悪いですわ。今ならまだ電話をすれば車が戻って・・・」
「僕携帯忘れて来たんだよね」
「・・・こんな事なら、素直に乗ればよかったですわ」
「いーじゃんいーじゃん!
さ、いこっか」
「手を握るの、やめて下さいな」
「いーじゃん、デートみたいでしょ?」
ニッコリ笑顔の静に紫翠は眉を下げて笑った。
ああ、全く静ったら。
何度私にその笑顔を、優しい態度をとらないでと、心の中で願ったと思っていますの?
本当に邪気のない・・・その笑顔。
私なんかがそのような笑顔を・・・受ける資格はないのに・・・。