「んー、そのうち呼ぶかもしれないし、呼ばないかもしれない」

「……それってズルくない?」

「ズルくない」


えー……絶対ズルいよー……。

私も名前で呼ばれたいなぁ。




「……いつかは、名前を呼んでくれる?」

「多分ね」


うーん……なんか、絶対呼んでくれなさそう……。






「奈央」


……え?

あれ、今、私の名前……。




「そろそろ帰ろうか、 結城さん」


……あれれ?

また「結城さん」に戻っちゃった。


「……名前、呼んでくれないの?」

「3年に1回くらいは呼ぶ」

「えー……じゃあ次は3年後?」

「イエス」

「……もー、啓介くんの意地悪っ!!」

「あはは」


ニコニコと楽しそうで、どこか嬉しそうに笑う啓介くん。

それを見ていたら、なんだか私も嬉しくなって、楽しくなって。


人通りの少ない道でじゃれ合いながら、私たちはいつまでもいつまでも笑っていた。