「出会ったことに後悔したって仕方ないよ。
歩んできた道は変えられないけど、だからこそ今この瞬間があるし、これからの未来があるんだよ」
そう言ったあと、犬飼くんはふっと息を吐いたあとに立ち上がった。
「少し風にあたってくる。 キスしてごめん」
その顔は微笑んでいたけれど、なんだかとても寂しそうだった。
……心臓が、ドキドキする。
犬飼くんにキスされたことはもちろんだけど、でもそれよりも、犬飼くんの言葉が胸に熱く響いた。
“歩んできた道は変えられないけど、だからこそ今この瞬間があるし、これからの未来があるんだよ。”
今この瞬間と、これからの未来。
過去に戻ることは出来ないし、やり直すことも出来ないけど……でも、みんなとの出会いがあったからこそ、今の私はここに居る。
みんなとの時間は苦しいことだけじゃなくて、凄く凄く楽しくて幸せなことだから……後悔する必要なんて、ないのかもしれない。
犬飼くんの言葉が、迷っていた私の心をほんのりと温めてくれた。
