ねぇ メロス

どうしたら君みたいな勇気を出せるだろう


幸せな日の翌日に命を捧げられるような

恐怖の塊のような約束から逃げないような

大切な親友を裏切らないような…


そんな勇気を



同じパンを分け合ったような

そんな仲だった 君と僕

大きな木の下はふたりの家

僕が作った出来損ないの物語

君はいつも笑顔で聞いてくれてた


君と僕は身分違い

そんなこと子供の僕らにはどうでもよかった

ほんとに仲が良くて

兄弟だと思ってた ほんとだよ


君は言ってくれた

僕のためなら1000回でも走る、と

僕の大好きだった優しい笑顔で

僕が奪った優しい笑顔で



僕はほんとうに臆病で

天秤にかけた二つの重りは

はるかに自分の方が重かった

目の前の君が赤く染まっていくのも

それが僕のためと知っていても

僕は何もしなかったんだ

最後に合った君の目は

相変わらずどこまでも澄んでいたよ

最後に合った僕の目は

どこまでも濁っていたんだろうな…



ねぇ メロス

僕は自分の命と引き換えに

親友、信頼、愛を失くしたんだ

どっちが正しいかなんて言えないけれど

どっちがよかったかはもうわかってるよ


きみは友の心で生き続ける

僕が守ったはずのこの命は

どこでも生き続けることはないだろう…