放課後、教室を出ようとするあたしに志乃が声をかける。


「あ、小早川さん」

「ごめん、忙しいから」


あたしは彼女と顔も合わせなかった。

彼女の顔を見るのが怖かった。


痛む胸を押さえて、美術室に逃げる。




先輩はイーゼルに真新しいキャンバスをセットしていた。

いよいよモデルの仕事がはじまるらしい。


「そこの椅子に座って。で、これ持って」


茶色い芋虫のぬいぐるみを渡された。

アメリカの子供番組に出てきそうな、ファンキーな顔が気持ち悪い芋虫だ。