「ミコト…」


私は何をしていいのか分からなかった。


幸い、部下がいないのが救いである。


だが、なぜ突然現れたのかわからない。




「辻本に合わせたい人がいる…」

「あんた…」



「僕は頼まれたんだ。
伊藤に…。
だから、来ないなら来ないでいい」




「そう、それじゃあ伝えといて、元気でねって」


「わかった。お父さんにも伝えとく…」


「ちょっと待って」


「何…」


「お父さんって誰の…」


「辻本のだよ」


「なんで知っているの」


「辻本のお父さんから聞いた」


「ちょっと待ってよ。何言っているの。
一度もあんたに会わせたことないじゃない」


「そうだよ。でも会ったことは何度もある」


「…」


「どうするの。来るの」


『神山ミコト』の言っていることが本当なら、お父さんのいる場所を知っているのだろう。



それに私のことも…



「いいわ。案内して」

「うん…」




『神山ミコト』は歩き始めた。


私は『神山ミコト』の後ろを歩いた。






沈黙が続いたが突然『神山ミコト』が話し始めた。




「目的地に着く前に話さないといけないことがあるんだ」

「何…」

「お父さん、重傷だから…」