朝、綾香は会社に行く支度をしながら裕二が心配で仕方なかった。

「今日から新学期…」


はぁ。とため息をついた。

裕二はあれからも睡眠が取れず、寝不足が続いていたのだ。

「大丈夫かな…」

そう呟いて家を出た。


最近出歩く時はかならず一眼レフを持ち歩いていた。

裕二の教え方はアバウトだった。

どこを動かしてもいいから撮れ。だった。

綾香は会社までの道のりで撮れるものを撮って裕二に毎日見せていた。

でも毎日元気が無くなっていく裕二に綾香は心配でならないのだ。


怖い「噂」

それが怖くて仕方ない。

もし、矛先が裕二に向けられてしまったら…






「精神科に行ったら？」

お昼時、川口が言った。

「精神科？でも裕二君別に普通だし…」

「寝れないのは良くないよ。睡眠薬くらいならくれるんじゃない？」

綾香は考え込んでしまった。