先生の天使

生徒達をとりあえず帰るように促して慌てて綾香を車に乗せて病院へ走らせた。


「無理しちゃったんですね」

医者の言葉に裕二はほっとした。
綾香は落ち着いたのかベッドに横になっている。
自分にいっぱいいっぱいで綾香を思いやれなくて自分が情けないと思ったその時に医者が続けた言葉に驚いた。

「一人の身体じゃないんですから、あまり無理させないでくださいね。お父さん」

「は？！」

驚く裕二の様子をみて医者は聞き返した。

「ご存知無かったんですか？今３ヶ月ですよ。おめでとうございます」

裕二には状況がすぐには理解できなかった。
するとか細い声がした。

「本当ですか？」

驚いた顔で綾香が先生に聞いていた。

「気づいてなかったんですか？もうずっと生理も無かったと思いますけど…」

綾香は裕二の事で頭がいっぱいで気づいていなかったが、そうだ、もうずっと来てない。

綾香と裕二は顔を見合わせた。

「とりあえず今日はもう帰っても大丈夫ですよ」

そう言って医者は救急室を出て行った。