都会の生活に慣れた。 街は大きくて、裏道を覚えるのは大変だけど。 最近、よく雨が降る。 買い物帰り、傘をさす。 「…猫?」 路地裏の入り口に隠れるように身を小さくする猫がいた。 顔を覗きこむ。 雨に濡れて全身水浸し。 …こいつ、馬鹿? あたしは「おいで。」と声をかけると何も言わずついてきた。 アパートの二階。 203号室があたしの新しい住まい。 鍵を開けると男物の靴があって、彼が来たのだとわかる。 「ただいま。」 「おかえり。」 自分の家のはずなのに、他人に迎えられるって変な気分。