美人ではないけど柔らかな雰囲気と穏やかな笑顔。
仕事帰りのサラリーマンは母の姿に癒されて帰って行く。
実際、母の葬儀にはたくさんのお客さんが来てくれて、皆母を忍んで私達兄妹に暖かい言葉をかけてくれた。
だけど、私達の知ってる母はいつも働いていて……
親子の繋がりはお金だと思っていたから。
ぽっかり空いた穴はすぐに塞がると思っていたけど、私の胸を暖かくしてくれるのは……
――なぜか1度しか見た事のない彼。
もう一度会いたいと何度……
何十回……
何百回願ったのだろう……
初めて見た彼と同じようにドアにもたれかかり車窓を眺める。