数ヶ月前には考えられなかった話の内容に段々と自分の躊躇する原因がちっぽけに感じた。
その時……
「奈央。1度しか経験できないんだぞ?子供にお父さんとお母さんの結婚式の想い出を話してあげたくないのか?」
「……子供……」
「奈央だって……」
兄は一旦口を噤むと拓海の顔を見て微笑んでから……
「……拓海君だってまだ若いんだから、これからチャンスはいくらでもあるよ。まぁ、俺が先に結婚して奈央の事『おばちゃん』って呼ばせたかったんだけどな」
兄は苦笑しながらコーヒーを飲み干していて。
――『拓海君』
兄が拓海を受け入れてくれた。
たった一言の事なのに、嬉しくて涙がこみ上げる。