「あっと!いけね」



拓海は慌ててキッチンへ戻ってしまって。


コーヒーを飲もうとしてドリップポットを火にかけていたようで、火を止めてから「奈央もいる?」と声を掛けてくれた。


頷きながらコートを脱いでいると、コーヒーのいい香りが鼻を擽る。


鞄から煙草を取り出しローテーブルの上に置いてから洗面所で手を洗う。


拓海は左手を腰に当てて、ドリッパーを見ながらお湯を少しずつ注いでいた。



初給料で買ったドリッパーとポット。


私は一度も淹れた事がなく、専ら拓海専用。


あちこちの喫茶店で美味しいコーヒーの淹れ方を教えてもらい、何度も実践して今のスタイルになったみたいで。