社長は私達が続いている事を知っている。


拓海がすべて話した。


社長はただ黙って頷いていたらしい。


奥さんはあれから社長へ接触していない。


もし話していたら、また同じように話し合いの場を持つはずだから。



こうして新しい部屋に拓海を招き入れている私は、拓海が来る回数だけ奥さんを裏切っているという事実に心を傷つけている。


傷が塞がる前に新しく出来る傷。



この痛みを絶対に忘れてはいけない。


それだけのことを私達はしているのだから。



常にそう考えていた。


それが、私に出来る唯一の奥さんへの謝罪だったから。