私は水滴のついたグラスをキュッキュッと拭きながら、真央の言葉を待った。
「……修ちゃんが家に挨拶へ来るって」
「おめでとう」
「ありがとう」
「もう挙式の日は決まったの?」
私の問い掛けに無言で首を振る。
「でも、挨拶って事は修ちゃんサンもいよいよ本腰を入れたんだね」
「……綺麗……」
真央は私の質問に答えず、手元にある磨かれたグラスを見ていて。
「藤井さんは?」
「今日は奥さんの実家」
「そう」
私を心配してくれる真央は、こうして拓海の事を聞きはするけどそれ以上は言わない。
最初に真央がお店に訪れた時、拓海とは別れなかった事を話した。

