横を向いている男性は、車窓を眺めているけどその目には景色が映っていないように見える。


景色の向こうにある私には見えない何かを見つめているように思えた。





――その姿が今にも消えてしまいそうなぐらい儚く見えて……





私は男性が消えてしまわないか不安になってしまい、ジッと見つめていた。



茶色がかった黒髪はきっと風に吹かれるとサラサラしそうだけど、くせがあるのか今は綺麗にサイドへ流されている。


流行りの髪型ではなく、オーソドックスな感じだけどそれは彼に一番似合っているように見える。


サラリーマンなのだろう、濃紺のスーツの上着を手にかけていた。