「もしよかったら、うちで働きませんか?」



マスターの一言に私はただ……


目を見開いてしまった。



そんな私にマスターは穏やかに笑いかけながら言葉を続ける。



「心の痛みを知る人は、人に優しく出来ると思ってるんです。奈央さんならお客さんを癒せるんじゃないかと思いましてね」


「マスター……」


「無理強いはしません。他にお仕事があるんでしたらそちらを優先して下さい。あくまでも『もしよかったら』ですから」


「……こちらこそお願いします」



これから仕事を探さないといけないと思っていた私は思わずそう言って頭を下げていた。