「奈央」


「これを預けに」



鞄から取り出し、テーブルの上に差し出したのは『退職願』


拓海はじっと見つめたまま動かなかった。



「今までお世話になりました」



頭を下げて、すべての気持ちを込めた言葉を発する。


入社してから右も左も分からない私を、ここまで育て上げてくれた。


そして、私を愛してくれた。


どんな時も傍に居てくれた。


変わらない想いをぶつけてくれた。



――最後は笑って終わらせたい。



顔を上げると、拓海はなぜか泣きそうな顔になっていて。



「藤井部長。これからも頑張ってください」



つられて泣きそうになると思った私は席を立った……