社長からのメールに奥さんの言葉を思い出す。



『そろそろ拓海を返してね。じゃないと加藤さんに話さなきゃいけなくなるから』



――終わりだ……



力なく項垂れる私は携帯を地面に落した事すら気付けずにいた。





重い足を引き摺りながら事務所のビルまで辿り着いた。


出るのは重い溜め息ばかり。



『溜め息をつくと幸せが逃げる』



昔、友達が言っていた言葉を思い出した。


これ以上幸せがなくなることはないぐらいどん底だった私は自嘲するしかなかった。



エレベータに乗り込み、私情を顔に出さないように両頬を叩いて気合を入れる。