コトッと目の前にグラスが置かれ、意識が覚醒した。



「レモン水です」



マスターは穏やかな顔をして微笑んでいる。



「ありがとう」



差し出されたレモン水を口に含むと、爽やかな後味。


ごちゃごちゃ考えていた頭が少しだけ落ち着いた。



「ねぇ、マスター」


「はい?」


「たぶん……ね、近々また1人でお店に来ると思うの」


「はい」


「その時は、話を聞いて欲しいんだけど」


「分かりました」



マスターとの短いやり取りが終わった時、カランとドアのベルが鳴った。



「久しぶり」



真央の声が聞こえ、顔を向けると横に座りながらマスターに挨拶をしている。