『病気……なんかじゃ……ないんだから……っ』
嗚咽を漏らしながら訴えてくる奥さんの声に、重なる様に電話越しに何かを話している人の声が聞こえる。
『離して!返して!今、話してるんだから!落ち着いて……』
ブツッと音がして、奥さんの叫び声が突然途切れた。
ツーツーと電話の切れた音。
震える手で通話終了のボタンを押すと、コンクリートへ座りこんでしまった。
怖くて……
恐ろしくて……
震える手を胸の前で握りしめる。
――奥さんにバレていた事実。
拓海は義父母が話をすると言っていたけど、きっとそれ以前に拓海と私の関係を知っていた。

