『拓海が可哀想な貴方に唆されたって想像がつくわ。だけどね、私はこうして元気なの。別れるなんてありえないから』
「……」
『そろそろ拓海を返してね。じゃないと加藤さんに話さなきゃいけなくなるから』
加藤さん……って社長!
気付いた瞬間、無意識で声を荒げていた。
「そ、それだけは困ります!」
『元々、困る事をしてるのは貴方でしょ?何?その態度は?困るなら私に拓海を返してよ!』
――悲痛な叫び声が私の心を突き刺す。
『返して!返せ!拓海は私のものなのに!アンタなんかに渡さないから!』
叫び声がエスカレートして、最後は泣きだした奥さんに私は何も言えずにいた。

