「前に、奈央のお兄さんと話したんだ」


「……いつ?」


「手術の前」



――拓海が兄の部屋に行った時だ。



「今回はこういう選択を選んだけど、これからは絶対に奈央を泣かせない。身辺の整理をきちんとするって約束したんだ」



淡々と語る拓海がどれだけいろんな事を考えていたのか。



「もう、嫁さんとは一緒の人生を歩めない。今までは仕方ないって思ってたけど、奈央に出会って俺はこのままじゃダメだと思ったんだ」



きちんとけじめを付けて、奈央と一緒に居たいから……



拓海の言葉に私は俯いて懸命に涙を堪えた。