無言でビールを開けて喉へ流し込む。
拓海は目を瞑っていて、これから話すことを頭の中で整理しているように見えた。
「拓海の思った事をそのまま言ってよ」
理路整然とした話なんて聞きたくない。
拓海の気持ちをぶつけて欲しい。
ちゃんと受け止めるから。
――ちゃんと現実と向き合うから。
無意識で発した言葉に、拓海は顔を上げた。
「ごめん。奈央」
頭を下げた拓海がぼやける。
――涙を見せたらダメだ。
拓海は自分の気持ちを隠してしまうから。
何度も別れようと考えたことがあったのに。
いざ、拓海の口からその言葉を聞くとなると言いようのない不安が覆い尽くす。

