慌てて席に戻った奈々ちゃんは、受話器を取り上げるとメモに書かれた電話番号に電話をかけ始めたようで。
私は釈然としないながらも携帯が震えはじめたので、鞄を机の横に置きながらスーツのポケットから電話を取り出す。
「株式会社△△の岡本です」
意識を仕事へと切り替えた。
家に帰ると、得意先から直帰していた拓海が居た。
だけど、いつもと様子が違っていて……
「ただいま……ってどうしたの?」
朝、出かける時には綺麗にしていた灰皿が煙草の吸い殻で少し盛り上がっていて。
憮然と定位置に座っている拓海に思わず声をかけていた。

