予定より早めに営業が終わり、ホワイトボードに書いた帰社予定の時間より早めに事務所へ着いた。



「ただいま戻りましたぁ」



ドアを開けて挨拶をすると、私の席の陰から立ち上がる姿。



「……奈々ちゃん?」



鞄を持ったまま席に戻ろうとして、彼女が手に持っていたものが視界に映った。


慌ててポケットに隠そうとした彼女の手を寸前の所で握る。



「何……してるの?」


「あっ、すいません。先輩からもらった得意先の電話番号を書いた紙をなくしちゃって。もしかして残ってないかなぁと思って」



彼女の手の平からはみ出た黄色い紙。


外回り前に電話を受けたのは確かな事で。