震える右手を彼の唇から離す事ができずに、首を横に向けて溢れる涙を見せないように努力した。



「ごめん……産めなくてごめんね」


「俺がすべて悪いから」



右手に暖かいものを感じた。


それが拓海の涙だと気付きながらも、目を合わせられなくて。



――2人で声を押し殺して……


涙を流した。



産まれる事が出来なかった私達の赤ちゃんにごめんなさいと……





1週間後、私は仕事へ復帰した。


会社に提出する有給届には『私用の為』と記入した。


吉沢課長には子宮筋腫の手術だったと伝えた。


課長から真央へ話は伝わったのだろう。