兄だってたくさん給料をもらってるわけじゃないのに……



私まで迷惑をかけられないと思い求人誌を買って『正社員』と書かれている欄だけを見ていたのは、偶然乗った電車の中。


時間は14時。


通勤・通学とは関係のないこの時間の電車は結構好き。


人が全くいないわけでもないのに、でもなぜか時間がゆっくり過ぎて行くように感じて。


7人掛けの端っこに座っていた私は溜め息をついて顔を上げた。





――ドクン……!





座っている座席の反対側のドアにもたれるように立っていた1人の男性に目が奪われた。