「……藤井……さんなのか?」



兄も驚いているようで、同じように立ち止っていた。


拓海は私達に気付いたのか、実家の前からこちらへ向かって歩いてくる。


私達の前で立ち止まる。



「初めまして。藤井と言います」



兄に頭を下げていた。



「奈央の兄です。両親が居ませんので親代わりも務めてます」



兄も同じように頭を下げていた。



私は彼らの前でなすすべもなく立っていることしかできなくて。


あんなにも会いたかった拓海がすぐ目の前に居る。


だけど、今は会いたくなかった。



明日まで……



会いたくなかった。