「お兄ちゃん……」



――拓海には話せない。



拓海に話すと、彼は奥さんと離婚すると言いだすに決まっているから。


子供が産めない奥さんに、こんな形で拓海を奪う事は出来ない。



頼れるのは……


兄しか思いつかなかった。



「メ……メール……見た?」


「あぁ。大切な話があるんだろ?」


「わ、私……お兄ちゃんしか……頼れなくて」



俯いて堪えても涙が押し寄せるように零れる。


唇を噛んで堪えても、体の震えが止まらなくて。



「とにかく……座ろう」



兄は握っていた両腕の力を少しだけ緩めると、片方の腕を持ったままダイニングテーブルへ腰掛けるように勧められた。