「……好きだ……」
小さいけど私にだけ聞こえるように囁かれた彼からの言葉。
「奈央が……好きだ」
少しずつ彼の腕から力が抜け、体の間にさっきまでなかった隙間が出来始める。
それは彼が目の前から消えてしまいそうな……
もう二度と会えなくなりそうな。
完全に彼の腕が解かれ、体が震えた。
「奈央」
今度ははっきりと名前を呼ばれる。
彼は少し屈みこんで、私に目線を合わせていて。
その瞳には泣きはらした目をした不細工な自分の顔が映っていて。
目線を砂浜へと下げた。
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