「ありがとう……」



さらに力を込める彼の腕に私の体が少しだけ軋む。


それでも彼に抱きしめられていると安堵感に包まれるのは


彼が大好きで仕方がないから。





彼に抱きしめられる事は何度も何度も夢で見た。


目覚めると涙が零れていたのは嬉しいからか、苦しいからか。


どうして抱きしめられたのかだけは覚えていなかったから。



今もそう。


彼が私をこうして抱きしめているのだって……



――なぜ……?



なぜ貴方は私を抱きしめているの?