彼の指から私の手が完全に離れた。 私の手はそのまま、自分の体の横へ戻ってくる。 震える手を胸に当てて、堪えていた嗚咽が口から出る瞬間…… 「奈央」 名前を呼ばれたと同時に、顔に痛みが走った。 右頬がザラザラした布に押しつけられる。 嗚咽を飲み込んだ口と泣きそうなせいで少しだけ詰まっている鼻でわずかな空気を取り込むと シトラスの香りと煙草の匂いが私を包み込んでいた。 気付くと同時に、背中と頭に彼の手の存在が分かる。 その腕がさらに私の体を締め付ける。 ――抱きしめ……られてる?