――なぜという言葉だけが頭をグルグル回っている……
いつもなら一番にアルコールを口にするけど「今日は車だから」とウエイターに話しかけている。
すると、ノンアルコールのシャンパンが運ばれてきた。
「乾杯」
彼はニッコリ笑ってグラスを傾ける。
――何に……乾杯?
そう思いつつも、つられて彼のグラスへ自分のグラスを合わせた。
食事が少し進んだ頃、彼は唐突に言葉を発した。
「今日はお祝い」
「お祝い?」
「そう」
綺麗な手でお肉を切る動作に目が吸い込まれていた。
「何の?」
「奈央の誕生日」
「えっ!」
――ホントに今日は私の誕生日だ……

