3回コールで呼び出し音が途切れいつもと変わらない彼の声が耳に届いた。
『奈央?』
「今、駅に着きました」
『じゃあそこで待ってて』
「えっ……ここで?」
『迎えに行くから』
「あ……っ」
聞こえるのはツーツーという通話が終了した音。
携帯を片手に持ったまま、私はただ立ち尽くしていた。
意味が分からない……
――すると……
見た事のない黒いセダンがゆっくりと私の目の前で止まる。
助手席の窓がゆっくり降りて
「乗って」
運転席でハンドルを握るのは……
――彼……
頭は混乱してるのに、体はドアノブを握りドアを開けて助手席へ体を滑り込ませていた。

