佐々木さんの言葉に私は顔を上げて目を瞠るしかなかった。



だって……



彼は何かを諦めているように感じて……


少しだけ伏せられた長い睫毛の下にある目は何も映していないように思えて。


一瞬、電車の中で初めて彼を見た時の情景と重なって見えたから。



「佐々木さん?」

「佐々木〜」



私と上原課長の声が重なった。



「はい。今行きます」



上原課長を見た佐々木さんの表情はいつも通りの穏やかなもので。


私は見間違ったのかと思い、目をゴシゴシと擦った。



「岡本さん。俺は後輩ですけど何かあれば手伝いますから」



やはりいつも通りの穏やかな笑顔を私に見せると、上原課長の元へ歩いて行った。