「……っ」
彼の名前が出たとたん鞄を持ち損ねてドサッと落としてしまった。
真央は「大丈夫?」と言いながら拾ってくれたけど、私は動揺を悟られないようにお礼を言った。
私の今の気持ちを真央ならどう受け止めてくれる?
奥さんのいる彼を好きだという私の気持ちを……
喉元まで出かかっている言葉を無理やり押さえこむように息を思いっきり吸い込む。
前を歩く背中を見ながら
――いつか……
真央に彼の話をしてみたい。
今まで知らなかった一面を思わぬ形で見せてくれた真央。
彼女なら私の気持ちに耳を傾けてくれるかもしれない。
そんなことを考えながら……