「黙れガキが!幽霊みたいに青白い顔しやがって!!本当は死んでんじゃねーの?!」

「失礼な!私は色白なだけです」


(そういえば…)

二人のやり取りを聞いて、藤堂の表情が微かに曇った。

(総司の顔色が悪く見えるのは俺の勘違いじゃなかったのか)

彼が気にしているのは沖田の体調。

ここ最近、夜な夜な藤堂の部屋の隣室から意識的に抑えるような咳が聞こえていたのだ。部屋は齋藤と沖田に挟まれた場所に位置しているが、咳は明らかに沖田の部屋の方向から響いていた。


(きっと風邪が長引いてるんだな)

どうせ聞いても笑って誤魔化されるだけなので、自分の中で疑問を消化する藤堂。横目でさり気なく土方と口論をする沖田を見る。
沖田はいつもと変わりない笑顔で笑っていた。藤堂は、それを見て一人密かに安心したように深呼吸をした。



「もういい!要件だけ聞いてさっさと帰れ!!
総司、お前山崎から聞いたか?」

「ええ。今さっき汚い字の手紙を頂きました」

「いちいち一言多いんだよっ!字なんて読めりゃそれでいいだろ!!」

「何?総司はもう知ってるの?!」

自分だけが何も知らされていないとわかり、藤堂は再び喧嘩が始まりそうな二人の間に割って入る。

「あれ?もしかして平助知らないの?!」

藤堂の声に驚いたように沖田が頓狂な声を出す。同時に、土方も自分がまだ伝えるべきことを伝えていない事に気づいた。

「すまん、藤堂君。君が変態だって話をしてたら大事なことを言い忘れていた」

「私はその平助が変態な理由を是非とも聞きたいですっ!」

「総司、お願いだからそれ以上触れないでくれるかな?」

「私は平助が変態でもうまくやっていける自信ありますよ?」

「もうほぼ変態って事になっちゃってるし!!」


「おら黙れ馬鹿ガキ共ッ!!」


変に盛り上がりを見せる“藤堂変態論争”に痺れを切らせた土方が、カンカン!と火の点いてない煙管で火鉢を叩いて二人を静まらせる。