「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
おばあちゃんの優しい笑顔を見て私は玄関のドアを閉めて歩き出す。
すると『パタパタッ』と走って来る足音が聞こえてきた。
後ろを見ると走る空がいて、私の横まで来るとスピードを落とし、私の歩幅に合わせて歩き出す。
「一緒に行こ?」
私は何も言わずそのまま歩く。
聞こえてくるのは二人の足音だけ。
……あと私の騒がしい心臓の音。
おかしい。昨日は虫や鳥の鳴き声も聞こえていたはずなのに。
今は聞こえない。
「もうちょい笑いーよ……」
「え?」
「愛はなんか…冷めとるように見える。全然楽しそうに見えん」
なに、いきなり。
こっそり見た空の横顔は真剣だった。
真っ直ぐ前だけを見ていて…
「昨日、愛が笑った時の顔……めっちゃいい顔で笑っとったばい?」
え?…いい顔…?
すると、空がいきなり走ってこっちを振り向き「やけんっ、もうちょい笑い!」って眩しいほどの笑顔で私に言う。
――ドキンッ…



