「わかった。もう行っていい」



頭を軽く下げると廊下に向かう。
ドアを閉めると背中をドアにくっつける。


何秒か静止すると歩き出した。

その時。



「愛」



進めていた歩みを止める。



───ドキンっ……



…そ、ら……



「一緒に帰ろ…?」



待っててくれたの?


空の優しさが

空の笑顔が

空の存在が


……愛しく、胸を締めつける。



「愛?」



うつむいていたから空が近づいていたことに気づかなかった。


気づけば1mも離れていない距離。


……もどかしい距離。



「どうしたん?」



空が私の顔を覗くように見てくる。