「だったら……もっと人並みな事も教えてあげて頂戴。」





「……澄」








大きな御世話だと思った





自分は好きで勉強している
人並みに生活は出来る





彼女が心配する
理由が分からなかった








だからつい 言ってしまった





「余計な事言わないで下さい。僕は、不自由はしてません、」



「…話を聞いたのね。」






澄さんは弱々しく笑った



「……あなたの言う人並みが、よく分かりません。僕は十分人並みです」




彼女が傷付く事など
構わずに言った





「……久白君。あなたは人なのよ。人と関わる事が一番學ぶべき事が多いわ…書籍よりもね」










「…人は嫌いだ、」








人と関わる
僕がしたくない事だった






小さい頃から 教育され
人を信じるなと教えこまれた





そうだと僕も思った



"藤堂"の名に近づいて
くる打算的な人間




そういう人間を
たくさん見てきた






誰も 自分に近づいて
くる人間はいなかった






当たり前だ
近づいてくる人間は

見返りしか求めてないと
知っていたから。