「お願いがあります」

 男は小澤哲郎(おざわてつろう)と
名乗り、自分は一年前に死んだのだと
告げた。

「わ、私は石原由真(いしはらゆま)。

 高校二年生です」

 今さら「ご愁傷さま」も「お気の毒に」
もないだろう。

 死者を相手に何と言っていいかわからず、
しかたなくユマも自己紹介をする。

「あの……お願いって?」

 相当思い詰めていたのだろう。

 テツロウは咳き込むようにして
話し始めた。

「あ、ある人に急いでコンタクトを取って
 いただきたいんです。

 僕の思いをすぐに彼女に伝えて
 いただきたい。

 時間がないんです。

 とにかく僕も彼女もこのままじゃ――」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 彼女って? コンタクトって? 

 奔流のような言葉に押し流されそう
になり、ユマは慌てて哲郎を制した。

「あの、もっときちんと説明してください」

「言ったでしょ? 急いでいるんですよ」