少し落ち着いた私は波留さんに言われた通り会場へは戻らず、そのまま1階へ降りてフロントで荷物を受け取るため名前を告げた。
穏やかな顔をした若いフロントマンは私の泣き腫らした顔を見ても何も言わず、ニッコリ笑ってから「こちらになります」と言って鞄と小さな紙袋を手渡してくれた。
「あのっ、これを預かっていただけませんか?」
指にはめていた波留さんから借りた指輪とポケットに入れたままになっていた社員証を手渡す。
フロントマンは「かしこまりました」と言って預かってくれた。
きっと直接渡せない理由を彼なりに考慮してくれたのだろう。

