エレベーターに乗ろうとボタンを押す。 チンと音が鳴り扉が開くと、中に大久保さんが居て。 ドキッ! さっき落ち着いたばかりの心臓が派手な音を立てた。 「じゃあ来月、よろしくな」 片手に缶コーヒーを持ち、ヒラヒラと手を振って私の横を通り過ぎた時に鼻を掠めた少しだけ甘い匂い。 大久保さんにすごく合う匂いだと思ったのはなぜなんだろう? 無言で頭を下げた時に、その匂いを思いっきり吸い込んだのはなぜなんだろう? ――大久保さんへの淡い想いを抱いた瞬間だった……