だからバイトが終わる今日まで百合さんは旦那様……
波留さんの話をすることができなかったんだ。
だけど百合さんはきっと後ろめたかったのかもしれない。
何度も言いづらそうに困った顔をしていたから。
『約束したから』
それは波留さんとの約束で。
「香穂……ちゃん」
百合さんに肩を優しく掴まれて意識が浮上する。
「……っ」
レースのハンカチを顔に優しく押し付けられ涙が零れていた事に今更ながら気付く。
波留さんと先生と俊さんの心配そうな目がさらに私の涙腺を崩壊して。
「……っなさい」
ごめんなさい……
下を向いたまま百合さんの手を振り切ってトイレへと駆けだしたのは、もう私自身が限界だったから。

