勿忘草

「いいじゃねぇか一つくらい。お前のおかず全部唐揚げなんだから」

コイツの弁当はいつも好物だけ。
今日は一段目はごはん。二段は唐揚げが弁当支配している。


「かーえーせー!!」


陽介が俺の首を掴み、体を揺する。

「ぐぉっ!ちょ…ムリ」


息ができなくて窒息しそうになっていたら、
黙々とごはんを食べ続けていた秋夜がガタリと立ち上がった。

そしてすぱーんと両手でそれぞれの頭を同時に殴った。


「あでっ!!」


「いっ!!」


「お前らうるせぇ。ったくメシくらい静かに食え」

呆れながら少しうんざりしたように秋夜は言った。

「陽介、唐揚げ1つでお前やり過ぎだ。ほら、ハンバーグ。これで許してやれ」

そういって見覚えのあるハンバーグを陽介に渡す。

「仕方ねぇな」

渋々ハンバーグを頬張る陽介はなんだかんだいって嬉しそうだ。
あいつにとってハンバーグも大好物だから。


「ってそれ俺のハンバーグじゃねぇか!!」


陽介の口を指差しながらそう言うと、
お前が唐揚げ食ったからだろと、秋夜は何食わぬ顔で再び飯を食べ始めた。