確かに東条は掴み所の無い不可解な生徒だ。
教師人生20年の今までに出会ったことの無いタイプ。
いつもどこへ行くのか、昼頃までには学校を抜け出して、
まともに授業を受けたことが無い。
担任として他の教師からも報告は受けているが、
頭は悪くない。
それに、どう見ても違法ドラッグに手を出すような
よどんだ雰囲気は感じられない。
級友を全く無視しているが、
心の眼はいつも真っ直ぐに前を向いている。
この澄んだ目を見れば分る。
何か問題を起こすような生徒には独特の臭いがあるものだ。
女子生徒たちの言葉ではないが、
東条には全体に気品がある。
しかし… 今の言葉は。
「詳しいじゃあないか。
どうして君がそんな事を知っているのかなあ。」
刑事の一人が警戒心・猜疑心をあらわにして京介に声をかけた。
何故、タイレノールなんていう言葉が出たのだ。
そんな言葉は普通では出ないものだ。
「刑事さん、俺を疑うのは筋違いだ。
違法ドラッグの事は父から聞いた。
俺は父の言葉は忘れない。
警察がもっとしっかりしていれば
こんなものが世間に出回ることも無くなるって事だ。」
そこまで話して、京介は自分を不審者のような目つきになって見ている
二人に冷たく言っている。
特に洞察力の鋭い京介、相手の心理など、
それがたとえ警察官であろうとも簡単に見抜ける。

