そうなのだ。
その頃には三年生の東条京介が東大を受ける、という噂が広がり…
水面下ではその行為だけでも興味を持って見られていた。
知らなかったのは、学校生活に無関心な京介本人だけだ。
「和美の家が隣だった関係で一応は知っていますが…
何を知りたいのですか。
和美があいつと付き合っていたことは知っています。
吉岡はいい奴です。
あいつはサッカー部で、中学も同じでした。
和美が時々前の公園であいつと話をしていて…
それで僕も一緒になって話したことは何度かあります。
仲は良かったですよ。」
と、直道は吉岡と和美の様子を話し始めた。
「そうか… 何かトラブルに巻き込まれると言う要素は無かったか。」
「トラブルですか。
和美はコーラス部… いつも楽しそうにしていた。
トラブルで思い出すのは和美の兄です。
芳郎と言う兄がいるのですが、あいつ、高校を中退して家を出て、
噂ですけど新宿辺りでチンピラのような事をしていると聞きました。
芳ちゃんならトラブルがあっても不思議では無いけど、
和美や吉岡は絶対にありません。」
直道の目には、二人の関係は良好に見えていたようだ。
そして一瞬引っかかったのが、
高校を中退してチンピラのようになっているという兄の存在だった。
「そいつは何故退学をしたのだ。」
「恐喝です。高校に入ってすぐ…
それが学校に伝わり、親にも知らされ…
おじさんにすごく叱られ、腹を立てた芳郎はその場で家出、
それから一度も家に戻っていません。
この間もおばさんがうちの母と話していました。
おじさんは、もう親でもなければ子でも無い、と言って口には出さないらしいですが、
おばさんは芳郎が人様に迷惑を掛けなければ良いが…
と案じていました。」
「親不孝な奴だな。どんな奴なのだ。」
と口には出したが… いくら和美の兄と言っても、
そんなチンピラのようなやつが、屋上にいたとは考えられない。

